前立腺がん
前立腺がん
肺癌、胃癌、大腸がんとともに男性がかかるがんで最も多いがんのひとつです。前立腺がんは加齢とともに罹患率が高くなり、60歳以降から罹患率が増加しますが、最近では50歳台で発見されることも少なくありません。年間約10万人が新たに前立腺がんと診断され、約1万人以上が命を落としており、その数は増加しています。
前立腺がんはPSAという血液検査で早期発見が可能ですが、日本では男性の約10%程度しか検査を受けていないと言われています。一方、欧米では男性の70-80%がPSA検診を受けており、近年は前立腺がんの死亡率が低下しています。今までに検査を受けていらっしゃらない方は、ぜひ一度ご確認することをおすすめします。
症状
早期の段階では無症状ですが、進行すると前立腺の周囲に浸潤したり、他臓器に転移します。前立腺がんはリンパ腺や骨に転移しやすく、骨に転移すると痛みや骨折を引き起こします。
検査
①PSA(前立腺特異抗原)
前立腺がんの診断においては、まずは採血によるPSAの測定が特に重要です。
PSAが4 ng/mlを超えると前立腺がんの存在を疑う必要がありますが、前立腺肥大症や前立腺の炎症でもPSAが上昇することがあります。
・PSA4~10 ng/mlはグレーゾーンとして考えられ、20~30%で前立腺がんが見つかります。
・PSA10 ng/ml以上では前立腺がんの発見率は50%以上と高くなります。
・PSA20 ng/ml以上では周囲に浸潤したり、転移したり、進行している可能性が高くなります。
②直腸診
前立腺癌の場合、硬いしこりのように触れることがあります。
③超音波(エコー)
外来にて行える簡便な検査です。がんを発見したり、前立腺の大きさを測定します。
④MRI検査
PSA高値で前立腺がんが疑われる場合には、MRIにて前立腺がんの有無を調べたり、がんの局在や浸潤度を評価します。
*当院から徒歩6分の提携画像センター(メディカル富士見台)にてMRI検査が可能です。
⑤前立腺針生検
経直腸または経会陰的に前立腺の組織を採取し、前立腺がんの病理診断を行います。
*当院では前立腺生検を行っておりませんが、生検までの検査は迅速に行うことができます。
*前立腺生検をする場合は、どちらの病院にもご紹介できますので、遠慮なくご相談下さい。
治療
前立腺がんの治療は、がんの悪性度と病変の広がりの程度によって決められます。また、患者さんごとの病状、年齢、生活の状況、希望などに基づいて選択します。
悪性度が低く、がんも小さい場合で、特に75歳以上の高齢者の場合には、潜在がんの可能性も高いために、積極的な治療を行わず経過観察とすることもあります。
75歳以下の年齢で、悪性度が低く、がんが前立腺に限局している、いわゆる早期の場合には、手術(ロボット支援科手術)あるいは放射線治療を行います。前立腺が周囲に浸潤している場合には、ホルモン療法を併用した放射線治療が適応となります。他臓器に転移を有する場合には、ホルモン治療を行います。
➀PSA監視療法
積極的な治療介入は行わず、定期的なPSAのチェックと前立腺生検により前立腺がんの進行がないかを監視します。
進行がみられたら治療介入を行います。
病変が小さく、悪性度が低く、進行の可能性が低い、比較的高齢の患者さんの場合に行います。
②手術療法(ロボット支援手術)
前立腺がんに対する標準手術です。医療ロボットを術者が操作して、前立腺を摘出し、その後膀胱と尿道を吻合します。
悪性度の高い病変でも根治を目指すことができますが、術後の合併症として尿失禁および勃起障害がみられることがあります。
③放射線療法
・強度変調放射線治療(IMRT)・・・コンピュータで計算して、前立腺に放射線を集中して照射できる治療です。
・陽子線療法・・・水素の原子核を加速したものを陽子線と言い、これを腫瘍のみにピンポイントに照射できる治療です。
・重粒子線療法・・・炭素の原子核を加速したものを重粒子線といい、これをこれを腫瘍のみにピンポイントに照射できる治療です。
・蜜封小線源療法(ブラキオセラピー)・・・前立腺に放射線を放出する線源を刺入します。
④ホルモン療法
男性ホルモンの作用を遮断することにより、前立腺癌の増殖を抑える治療法です。
ホルモン療法は、転移している前立腺癌でも効果がありますが、手術や放射線療法のように前立腺がんを根治することはできず、治療開始数年後には効果が弱くなります。
しかし、近年は新規ホルモン剤が開発され、従来のホルモン療法が効かなくなった場合にも、効果が認められるようになりました。
⑤抗がん剤
去勢抵抗性前立腺がんに対してドセタキセル、カバジタキセルなどが使用されます。