腎嚢胞
腎嚢胞(じんのうほう)とは、腎実質内に液体が貯留した嚢状の袋をいいます。 多くの腎嚢胞は、症状もなく健康に害はありません。 しかし一部の腎嚢胞では、がんを伴ったり、腎嚢胞が多発することで腎機能が悪化する場合があります。
当院では泌尿器科専門医が対応致します。ほとんどは超音波にて診断することが可能ですが、がんが疑わしい場合はCTやMRIにて精査します。提携のメディカルスキャニング富士見台(当院から徒歩6分)やメディカルスキャニング練馬高野台(高野台駅から徒歩1分)にてCT、MRI検査することができますので、遠方からお越しの患者様もご安心下さい。
①単純性腎嚢胞
腎嚢胞とは腎実質内に液体が貯留した嚢状の袋をいいます。片側あるいは両側の腎臓に1〜数個の嚢胞(嚢胞液という液体が詰まっている袋)ができる病気です。袋の内容物の液体は、血液が濾過された成分とほぼ同じで、単発のこともあれば多数の場合もあります。また、嚢胞は小児ではまれですが、加齢とともにその発生頻度が増し、40歳ではCTなどで約50%の人に確認されます。発症メカニズムについてはわかっておらず尿細管の憩室からできるとも言われています。通常は無症状でほとんど問題になりませんが、嚢胞による圧迫症状や高血圧、水腎症、血尿を来す時は、嚢胞液を穿刺吸引後にアルコールなどで固定したりするなどの外科的処置が必要となることもあります。
【症状】
嚢胞はかなり大きくならないと腹部膨満感や腹痛は起こりません。嚢胞による圧迫で腎動脈などが圧迫されレニンというホルモン分泌が亢進し高血圧や、赤血球増加症などが起こる事が稀にあります。大きな嚢胞が腎盂(じんう)の近くにできたものは水腎症を来しやすく、次第に腎機能が低下していく可能性があります。
【診断】
健康診断の腹部エコー検査、CTなどで偶然発見されることが多いです。
嚢胞が感染を起こし、持続する発熱、側腹部痛、膿尿(のうにょう)などが出現することがあります。嚢胞に悪性腫瘍が合併することがまれにあります。
【治療】
基本的には経過観察で問題ありませんが、圧迫症状、高血圧、尿路の閉塞などがあれば、手術(開窓術)、経皮的穿刺による吸引固定などが行われます。
がんの合併がある場合には、腎がんの手術が必要になります。
②後天性嚢胞腎
両側性の腎嚢胞で透析療法を受けている40%以上の患者さんに認められます。両側の腎の皮質および髄質に多発性の小さな嚢胞が形成され、腎実質全体にまで広がり、一般に嚢胞内の溶液は清明ですが時に出血することがあります。カルシウムの結晶が含まれることがあります。嚢胞の形成は、尿細管細胞由来と考えられ、その周りの間質に線維化などが起ることにより尿細管が圧迫、狭窄し嚢胞が作られると想定されています。
合併症としては、①腎出血、②腎癌(約7%)があります。一般に無症状で、大きくなった腫瘤により腹部の圧迫感などで気付かれることがあります。
治療は、単純性嚢胞に準じて行われます。
③常染色体優性多嚢胞腎 ADPKD
常染色体優性遺伝により,両方の腎に大きな嚢胞や小さな嚢胞が多数できる病気です。日本における嚢胞腎の患者数は約31,000人で、約4,000人に1人が発症すると推定されています。成人になってから発見されることが多く,60歳までに約50%が末期腎不全に至るという報 告もあります.肝臓,膵臓,脾臓などに嚢胞を合併することがあり,脳動脈瘤の合併も多いです。
【診断】家族歴と画像所見(エコー・CT・MRI)をもとに行います。多臓器の嚢胞、脳動脈瘤の有無なども参考にします。
【治療】降圧療法、飲水、食事管理、薬物療法などにより嚢胞腎による腎機能低下を予防します。
1)降圧療法
腎臓の機能の悪化を抑制するためには血圧を適正に保つことが重要です。
2)飲水
飲水は、嚢胞の増悪因子である抗利尿ホルモン・バソプレシンの分泌を抑える効果が期待できます。このため、ガイドラインでは、嚢胞形成・進展を抑制するために1日に2.5〜4Lの飲水が提案されています。
3)食事管理
医師・栄養士の指導により、血圧管理や体重管理のために塩分制限、適正なカロリー摂取などを行います。なお、腎臓の状態に応じて蛋白質の摂取制限などを行うこともあるので、良質の蛋白質をとりましょう。
4)薬物療法
尿を濃くし、尿量を減らす作用のある抗利尿ホルモンのバソプレシンは、ADPKD/多発性嚢胞腎の嚢胞の形成、成長を促進する増悪因子であることが知られています。近年、バソプレシンの受容体拮抗薬(サムスカ®)が開発され、ADPKD/多発性嚢胞腎の進行抑制効果が期待されています。ただし、ADPKD/多発性嚢胞腎の患者さんの全例に使用できるわけではなく、治療開始時には入院治療が必要となります。
④常染色体劣性多嚢胞腎
常染色体劣性遺伝により,両方の腎に小さな嚢胞が多数できる病気です.1万人に1人の頻度で発生し,多くは乳幼児期までに末期腎不全に陥ります。最近は生まれる前に診断されるお子さんも増えています.
治療としては、根本的なものはなく,対症療法が主になります。
⑤髄質海綿腎
腎の中の集合管と 呼ばれる部分が嚢胞状に広がる先天性の病気です。多くは両方の腎におきます。成人になって見つかることが多いですが,小児でも見つかることもあります。腎結石や血尿,尿路感染で発見されることが多いです。片側肥大症,馬蹄腎などに 合併することも多いです。腎機能は比較的良いことが多いです。
治療としては、主に結石などに対する対症療法を行います。