慢性甲状腺炎
慢性甲状腺炎
慢性甲状腺炎は、病理組織から提唱された概念で、
甲状腺組織にリンパ節浸潤を伴う病態です。
1912年橋本策先生が投稿した論文により、国際的に
認められるようになったことから別名、橋本病ともいいます。
症状
甲状腺が腫大していることが特徴的ですが、
外見からは目立たない方も多くいらっしゃいます。
病期によって甲状腺機能とそれによる症状は異なります。
診断当初は甲状腺機能正常な方も、徐々に甲状腺機能が低下してくることが多く、
甲状腺ホルモンが低下すると
倦怠感、むくみ、寒がりになる、便秘、皮膚乾燥などの症状が現れます。
また、悪玉コレステロールが上昇します。
体調不良の背景に、甲状腺機能低下症が隠れていることがあるので、
症状がある方は、採血検査をうけてみてくださいね。
診断
日本甲状腺学会の診断ガイドライン
- a)臨床所見
1.びまん性甲状腺腫大(萎縮の場合もあります)
但しバセドウ病など他の原因が認められないもの- b)検査所見
1. 抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(抗TPO抗体)陽性
2.抗サイログロブリン抗体陽性
3.細胞診でリンパ球浸潤を認める- 慢性甲状腺炎(橋本病)
a)およびb)の1つ以上を有するもの
- 【付記】
- 1.
- 阻害型抗TSH-R抗体などにより萎縮性になることがある。
- 2.
- 他の原因が認められない原発性甲状腺機能低下症は
- 慢性甲状腺炎(橋本病)の疑いとする。
- 3.
- 甲状腺機能異常も甲状腺腫大も認めないが
- 抗TPO抗体または抗サイログロブリン抗体陽性の場合は
- 慢性甲状腺炎(橋本病)の疑いとする。
- 4.
- 自己抗体陽性の甲状腺腫瘍は
- 慢性甲状腺炎(橋本病)の疑いと腫瘍の合併と考える。
- 5.
- 甲状腺超音波検査で内部エコー低下や不均質を認めるものは
- 慢性甲状腺炎(橋本病)の可能性が強い。
検査
- 採血検査 (一般的な項目に加えて、甲状腺ホルモン、
甲状腺自己抗体(抗TPO抗体、抗Tg抗体)を測定します。)
2.甲状腺超音波検査
甲状腺機能が正常でも、徐々に甲状腺機能低下となることが多く
定期的な採血検査で経過観察をさせていただきます。
当院では、甲状腺超音波検査を平日14時に行っています。
治療
多くの患者様は、甲状腺腫は小さく、症状がないことが多いです。
TSH(甲状腺刺激ホルモン)が基準値であれば、治療の必要はありません。
しかし、一般的に慢性甲状腺炎は進行性であり、
甲状腺ホルモンは徐々に低下してくることが多いです。
甲状腺ホルモンは、法定健診などに含まれていない項目なので、
定期的な採血検査で経過観察をしています。
甲状腺機能低下症となった場合には、
レボチロキシンナトリウム(商品名:チラーヂン)を内服して、
ホルモンを補充する必要があります。